本学の産学連携を支援する3機構(産学共創機構、医療イノベーション機構、イノベーションデザイン機構)は、7月23日にScience Tokyo設立記念「International Open Innovation & Startup Symposium (IOI&SS) 2025」を日比谷国際ビルコンファレンススクエアにて開催しました。
IOI&SSは、産業界・アカデミア・行政の交流を通して、持続的な産学官連携活動と社会発展に資するイノベーションの創出を目的とする、東京科学大学最大級の産学連携イベントです。
今年のテーマは「Global Innovation Ecosystem」とし、基調講演、パネルディスカッション、ベンチャーピッチ等、多彩なプログラムを実施しました。また、協賛機関、協力機関、関係機関からはブースを出展していただき、参加者と出展者との交流の場も設けました。
当日は、約400名の会場参加者に加え、約300名のオンライン参加がありました。
プログラム
7月23日(水)10:00 – 17:00
【A会場】
Session1 開会挨拶&基調講演
Session2 グローバルエコシステムの事例
Session3 Science Tokyo起点のエコシステム
Session4 イノベーションエコシステム創出の鍵(パネルディスカッション)
Session5 表彰&閉会挨拶
【B会場】
イベント開催レポート
◆Session1 開会挨拶&基調講演
本学 理事長 大竹尚登の開会挨拶、学長 田中雄二郎の挨拶があり、文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課 課長の国分 政秀氏のご来賓の挨拶を、同課 課長補佐の中川原 秀樹 氏より、ご代読いただきました。
ご来賓の挨拶では、イノベーションエコシステムは、大学、企業、自治体、行政が連携し、ともに課題を発見し、解決策を創出する「共創の場」であり、グローバルな視点も必要であるとのお話をいただきました。
続く基調講演では、3名の方に、ご講演を行っていただきました。
産業技術総合研究所 G-QuATセンター長の益 一哉 氏には、「アジャイル・ダイナミック時代の産官学連携:人材の流動性が拓く、知とイノベーションの未来」として、エコシステムの本質は、人の流動性であり、国研・大学は、研究の場から共創の場になっていくべきとの提言をいただきました。
本学 環境・社会理工学院 教授/イノベーションデザイン機構 機構長の辻本 将晴は、「ディープテックスタートアップエコシステムの発展に向けて -MITで得た示唆-」として、エコシステムが動作するメカニズムを理解し、「システムデザイン」を行うことが必要とのメッセージを伝えました。
ダイキン工業株式会社 常務執行役員 テクノロジー・イノベーションセンター長の米田 裕二 氏からは、「企業から見たグローバルイノベーションエコシステムの重要性と期待」として、日本のエコシステムの一番大きな課題として、大学と企業をプロモートする人材の不足をあげ、産官学でワールドクラス人材の育成と、日本の独自モデルを作ることが重要との講演をいただきました。






◆Session2 グローバルエコシステムの事例
このセッションでは、4つの地域から、海外のエコシステムの事例を紹介しました。
カリフォルニア大学デービス校(UC Davis) のBenjamin Finkelor 氏からは、「Leveraging Industry-Government-Academic Partnerships to Innovate Solutions for the World’s Grand Challenge」として、ライフサイエンス、バイオメディカルエンジニアリング、テクノロジー、データサイエンスなどの新興・成長企業を対象にした、Aggie Square施設のご紹介がありました。
ICMG Group グローバル共創事業執行役の羽田 大樹 氏からは、「スマート国家シンガポールが描くイノベーションエコシステム」として、シンガポールを活用した日本テックの成長戦略では、外部パートナーとの共創や、起業支援やビジネス創成に取り組んでいる大学を活用することが重要との話をいただきました。
Interuniversity Microelectronics Centre (imec )のChris Van Hoof氏は、「Multidisciplinary collaboration will enable Health 5.0, Food 5.0 and Agri 5.0」として、OnePlanet Research Center が、ヘルスケア、フード、アグリテック、環境分野において、経済的・社会的インパクトの両方に貢献することを目的として設立されたことなどを、ビデオで紹介しました。
バージニア工科大学(Virginia Tech)のLuiz DaSilva氏からは、「CCI: A Partnership for Cybersecurity Research, Innovation, and Workforce Development」として、バージニアのサイバーセキュリティのエコシステムは、103ものスタートアップが参画していることなどを、ビデオで講演していただきました。




◆Session3 Science Tokyo起点のエコシステム
このセッションでは、東京科学大学が主導しているエコシステムを紹介しました。
はじめに、本学 副学長(産学官連携担当)/ 医療イノベーション機構 機構長・教授の飯田香緒里は、「Science Tokyoを起点にしたイノベーションエコシステム」として、本学の産学連携を支援する3機構が主体的に行っている、協働研究拠点*1や包括連携*2、TIP (Technology Innovation Program)*3 、INDEST (Innovation Design Studio)*4の紹介を行いました。
*1: https://www.oi-p.titech.ac.jp/list-of-collaborative-research-cluster-2/
次に、本学 ゼロカーボンエネルギー研究所所長 教授の加藤 之貴は、「グリーン・トランスフォーメーション・イニシアティブ (Science Tokyo GXI)のカーボンニュートラルへの貢献」として、GX技術イノベーションの社会実装エコシステムであるGXI*5は、日本独自のGX技術により、世界のカーボンニュートラルへ貢献をゴールとすることを講演しました。
続いて、本学 情報理工学院 教授の篠田 浩一は、「超スマート社会推進コンソーシアムが実現するオープンイノベーション」として、約60の機関からなる超スマート社会推進コンソーシアム(SSS)*6では、本学から約80名の教員が参加し、モビリティ、農業などの10個のフィールドを整備していることなど紹介しました。
そして、本学 環境・社会理工学院 教授の木村 英一郎は「デジタル・フード・プラットフォーム構想」として、「食」と「健康」の新価値創造と産学官のエコシステム・ビルディングによる、Digital Food Platform (DFP)構想について紹介し、スマート農業と個人のウェルビーイングをつなげる新ビジネスモデルについて講演しました。
本セッションの最後に、本学 副理事(医療工学担当)副学長(融合研究・イノベーション担当)/ 医療イノベーション機構 教授の藤田 浩二は、『医療現場観察プログラム「Healthtech Design Program」の取り組み』として、医療現場のリソースを提供し、コンサルティングを行うHealthtech Design Program*7の紹介を行いました。




◆Session4 イノベーションエコシステム創出の鍵
本セッションは、産官学金からの5名のパネリストにより、イノベーションエコシステムの課題とその解決方法を議論いたしました。
はじめに、モデレータの本学 副学長(産学官連携担当)/ 産学共創機構 機構長・教授の大嶋 洋一から、パネリストの紹介があり、各パネリストから、現在取り組んでいるエコシステムの事例のご紹介がありました。
最初に、北九州市 副市長の片山 憲一 氏から、同市で取り組んでいるG-CITY戦略と、今後予定されている北九州市と東京科学大学との連携の発表がありました。
次に、川崎市 臨海部国際戦略本部長の玉井 一彦 氏より、川崎市臨海部扇島地区の現状と課題、東京科学大学に対する期待について、お話がありました。
また、奈良先端科学技術大学院大学 理事・副学長 太田 淳 氏からは、同大学のイノベーションエコシステムの紹介と、これから始まる東京科学大学との連携についてのお話がありました。
そして、株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIOの磯和 啓雄 氏は、スタートアップへの投資について日米の比較を行い、エコシステム拡大に向けた新しい投資の方法についてお話がありました。
最後に、出光興産株式会社 上席執行役員 イノベーションセンター長(兼)次世代技術研究所長の鈴木 基弘 氏から、グローバルオープンイノベーションのネットワーク拡充と日本のイノベーションエコシステムに必要なことについてのお話がありました。
その後、モデレータとパネリストの議論に移り、イノベーションエコシステムに関する意見を交わしました。
最終的には、我が国が課題先進国のメリットを生かして、各地域で生じるローカルな課題をアカデミアの知見も生かして解決手段を見出し、それをグローバルなネットワークを介して世界に展開していく日本流のイノベーションエコシステムの創設が重要であり、今回のパネルディスカッションをその契機にしたい、という議論を行いました。

【B会場】東京科学大学認定ベンチャーコンテスト
上記の講演と並行して、本学認定スタートアップによる「東京科学大学認定ベンチャー」ピッチコンテストを開催しました。大学統合後、初めてとなる今回のコンテストには、全9社が登壇。「世界を変えるスタートアップ」として、社会課題へのアプローチを軸に、それぞれの技術やビジョン、これからの取り組みについてのプレゼンテーションを行いました。
登壇企業(発表順)
株式会社elleThermo(エレサーモ)
Crafton Biotechnology株式会社
OptHub株式会社
株式会社アンチキャンサーテクノロジズ
ディーウェザー株式会社
株式会社Vitaliza
株式会社東京医歯学総合研究所
iPEACE223株式会社
株式会社アークス
審査員
辻本 将晴 本学 イノベーションデザイン機構長・教授
盛合 威夫 氏 トヨタ自動車株式会社先進技術開発カンパニー 将来技術・事業創造グループ・主幹
川上 登福氏 株式会社先端技術共創機構 代表取締役
岡田 祐之氏 株式会社みらい創造インベストメンツ 代表取締役社長
宇佐美 篤氏 株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ 取締役・パートナー


【A会場】Session5 表彰&閉会挨拶
本日最後のセッションでは、「東京科学大学認定ベンチャー」ピッチコンテストの表彰が行われ、会場からは受賞者に大きな拍手が送られました。
結果発表
ITAP 最優秀賞: 株式会社アークス
審査員特別賞: Crafton Biotechnology株式会社



本シンポジウムの最後に、本学 執行役副理事(総合戦略担当)/執行役副学長(研究・産学官連携担当)の古川 哲史が挨拶し、本学 理事・副学長(研究・産学官連携担当)の波多野 睦子から閉会挨拶をいたしました。


◆ブース出展
シンポジウムの会場には、企業、自治体、大学、公的機関、そして、東京科学大学認定ベンチャーから26機関のブースが出展され、参加者との交流が行われました。
本学は、ここで形成されたネットワークを通じたエコシステムの構築を推進していきます。

【ブースにご出展いただいた皆様】
株式会社エヌジェイアイ/ 富士フイルム株式会社 / Wellspring Japan合同会社
出光興産株式会社 / 伊藤忠テクノソリューションズ 株式会社 / 川崎市 / 北九州市 / 国立大学法人九州工業大学 / ダイキン工業株式会社 / 千葉大学 学術研究・イノベーション推進機構 / 東京科学大学田町キャンパス土地活用事業 産学官連携コンソーシアム準備会 / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 / 日本電気株式会社 / 日本特許情報機構 / 富士通株式会社 / 三井物産株式会社 / 国立大学法人 室蘭工業大学
IOI&SS 2025を通して、東京科学大学が起点となり、国内外のステークホルダーのみなさまと共に未来の社会像を共創するための第一歩が踏み出されました。今後の展開にもご注目ください。
【共催】国立大学法人 東京科学大学 新産業創成研究院
【協賛】トヨタ自動車株式会社 / 株式会社FRONTEO / 三菱地所株式会社 / 三井住友信託銀行株式会社 / 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 / 株式会社WiL / 株式会社先端技術共創機構 / 株式会社みらい創造インベストメンツ / 株式会社ブロードリーフ / 日本材料技研株式会社 / 泉陽興業株式会社 / 千株式会社 / 富士フィルム株式会社 / 株式会社エヌジェイアイ / Wellspring Japan 合同会社
【後援】港区産業振興センター / 一般社団法人 蔵前工業会 / 東京科学大学お茶の水会
【協力機関】川崎市 / 北九州市 / 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 / 一般社団法人 日本経済団体連合会